花と花見

そうだ、花屋さんで適当な花を一輪買って、そのままお花見に連れて行くやつやろうかな!きっと桜とか見たことないだろうし!ってふと思い立ったけれど、花は花なんて花屋で見慣れているだろうしな……ってなってやめた。
お花見よりおもちゃ屋さんとか動物園とかに連れて行った方がいいかもしれない。もし行きたい所あったら遠慮なく言ってね。いやそもそも連れ回されたくないタイプの花かもしれないしな……

でもお花見に連れて行くのはやっぱりすごくいいアイディアだと思う。桜のきれいな公園に出かけてって適当にレジャーシートをひくでしょ。そんで家から持ってきた花瓶をシートの真ん中に置いたら、特等席だよって花を挿してあげるわけだ。天気もいいし絶対喜んでくれるはず。花見を終えて家に帰って来てからも、花瓶の中で桜のことを思い返してくれるんじゃないだろうか。

ってここまで書いて思ったけれど、ちょっと花に対して押しつけがましいんじゃないのか。レジャーシートも花瓶も持っていないのにえらそうに。相手はお前みたいにしゃべれないんだぞ。う~ん、そう、それはそうなんだけど、せっかく買ったのならたとえ短い付き合いでも仲良くしたい。それに花にはそんな私を許容してくれるだけの懐の深さがあると思うし……う~ん

とりあえず週末、私は花を買わずにお花見に行く。花屋の花にはよろしく言っておいてほしい。

心底ねこちゃん

にんげんにはねこちゃんが必要な時がある。にんげんによってそれは様々だが、私にとってそれは今だった。どうしようもなく頭がぐるぐるして眠れない。しかし私のそばにはねこちゃんがいない。というわけでイマジナリーねこちゃんの出番である。
イマジナリーねこちゃん。もちろんイマジナリーわんちゃんも素敵だけれど、わんちゃんではこちらに飛びかかってじゃれついてしまう。申し訳ないが、今は静かに沈みたい気分なのだ。こんな時はやはりねこちゃんである。

イマジナリーねこちゃんはこちらに背中を見せて静かにしている。綺麗な背中だ。小さい頭に手をうずめて撫でる。柔らかい毛並みを感じる。手のひらがぬくくなってくる。ねこちゃんの耳に手を伸ばす。ふにふにと触り始める。もちろん機嫌を損ねないように優しくである。ねこちゃんもそれが分かっているのか、何も言わないでいてくれる。賢いな、優しいな。そして何より果てしなくかわいいな。

そんなことを思っているうちに、イマジナリーねこちゃんはいなくなっている。おかげで今夜は気持ちよく眠れるかもしれない。ありがとうねこちゃん。また会おうね。

今に始まったことではない

高校生の時は、恥ずかしい失敗をしてしまったら「今に始まったことではない」と繰り返し考えていた。(お前が愚かなのは)今に始まったことではない(から大丈夫)……。ちょっと賢そうなふりをしているから失敗を恥ずかしく思うわけで、本当のお前は今も昔も賢くないんだから失敗したっておかしくない。……なるほどね!

高校生の頃はそれで心の平穏を保っていた。けれど今思い返すと、別にそこまで言わなくてもいいんじゃないのという気がする。失敗したのは今の自分なんだから、わざわざ昔の自分を叩きにいく必要はない。なんなら今の自分のことだって愚かだと思わなくていい。思えば昔は失敗した“愚かな”自分を宥めるのにいっぱいいっぱいで、次はどうしたらいいかを考えることはなかった。とりあえず何かに失敗した時は、失敗に至るまでの行動だけを省みて次に活かせばいいのだ。

でもそれが簡単にできたら苦労しないんだな!残念ながら今でもできている気はしないし、恥ずかしい失敗をした日は呻きながら帰っている。けれどいつの間にか「今に始まったことではない」とは思わなくなった。昔の自分を馬鹿にしなくなっただけ、あの頃から一歩前進ということにしたい。

工場見学に行こう

気がつくとカバンとかコートとかの色々なポケットからお薬が出てくる、お前はリスか?お薬は決まった時間になるべくちゃんと飲むようにしてください。私からのお願いです。

はい、こちらお薬製造工場です。皆様のポッケにお届けする様々なお薬を製造しております。飲み忘れてしまってもいいように、すべて飲み忘れるためのお薬となっております。はい、はい……ただいまこちらのレーンではお薬にラメを散りばめております。綺麗でしょう。飲み忘れても悲しくならないように、見た目を飾りつけているんですね。やはりキラキラしたものは心を慰めてくれますから。たとえ身体に入らなくとも皆様を元気にするお手伝いをね、少しでもできたらいいなと思っているわけです。本日はお薬製造工場第3レーンからお送りしました。それではまた来週。

なるほど、なるほど……。飲み忘れたお薬もこうなるとちょっとしたお守りみたいでいいじゃないですか。本当はお薬がいらなくなるのが一番なんですけどね。

脳みそは手洗いでよろしく

あなたの書いた文章を読んでみたいと言われた。それはすなわち「あなたが自分の考えをどう表現するか見てみたい」ということだと思った。

私の考え。私の頭の中はいつもめちゃくちゃで、でたらめで、こんがらがっている。ここ数年は特にひどい。何かを考えようと脳内を探索しても深い所まで行けない感覚が常にある。だから私の考えを人に説明するのは難しいし、そもそもあまり人に説明する気がない。恐らく自分ですらよく分かっていない。そんな私の書いた文章がどうなるのかさっぱり分からない。

けれど誰かが読んでみたいと言うのなら、ぐちゃぐちゃの脳みそを引きずり出して水洗いして切り分けて、これが私ですとお皿に並べるくらいはしてあげてもいいかなと思った次第。