ノット・ラブレター

私は君(もしくは君たち)のことがもはや、結構、そんなに、そこそこ好きではない。大嫌いとかではなくて、文字通りそこそこ好きではないのだ。何かきっかけがあったわけでもなく、ある日ふと君のことを「もういいや」と思ってしまった。生きているにんげんに対して「もういいや」も何もないのだけれど、そう思ってしまったからにはそこまでなのである。

「もういいや」と思ったあの日から、私は君の存在を小さく小さくする作業をしている。洗濯物の山を畳んでいくみたいに。きっと元々はそんなに大きい存在でもなかったんだけれど、たぶん自分で勝手に大きくしていたんだ。まあ今となってはその作業も手慣れたもので、ふとした瞬間に君の名前が出ても静かに流せるようになってきた。久しぶり、元気そうで何より、どうぞご勝手に。こんなふうに君の中の私もだんだん消えていってくれると嬉しい。私はもはや君に何も知られたくないし思い出してほしくない。私のことは忘れて、もっと楽しいことで頭をいっぱいにするといいと思うよ。

そこそこ好きではない君に向ける言葉って難しいな。君に言うことなんて、あの日に忘れてきてしまってもうあんまり残っていないから。それでも私は君の健康や幸せを祈っている、世界が平和だったらいいよねくらいの気持ちで。もしまた会うことがあれば、一緒にお酒でも飲み交わそう。たぶん来ないだろうその日が来るまで、またね。