マツケンとワルツを

決して死にたくはないのだけれど、自分がこの国でイキイキ生きている未来をうまく想像できない。最終的に社会のセーフティネットから滑り落ちる想像ばかりしてしまう。そうでなくとも不慮の事故でぽかっと死んでしまいそうで怖い……。死にたくないな……。でも人はいつか死んでしまうらしい。残念。特に残念なのは自分の葬式に参加できないことだ。自分の葬式なんて絶対楽しいに決まっているのに。お坊さんに頼んで木魚叩かせてもらお!それか教会でパイプオルガン弾いてもいいかもね。

何にせよ葬式をするなら、まず楽団を呼ぶ。音楽があるに越したことはないからだ。ジャンルは何でもいいけれど明るい方がいい。そうだ、マツケンを招いてマツケンサンバを踊ってもらおうかな。せっかくだしマツケンマハラジャも見たい。こうなってくるとマツケンと一緒に踊れないのが残念でならない。でも死んでしまったのだから仕方がない。私の分まで参列者に踊ってもらうことにしよう。

葬送の種類については今のところあまりこだわりがない。ただ火葬された自分の骨はちょっと見てみたい。どれだけの骨が残るのか分からないけれど、なんせ全身分あるのだから色々な楽しみ方ができるに違いない。遺骨を持ち歩くのもやるし、遺灰を海にまくのもやる。あとは遺灰をダイヤモンドにするのもやってみたいけれど、一番やってみたいのは遺骨の味見だ。他人の骨だと抵抗があるから、自分の骨でやるしかないと常々思っていたのだ。多分舌触りは良くないし味もしないんじゃないかな。美味しかったらまあラッキーくらいの気持ちでいる。

よくよく考えたら、棺の形とか棺に入る時用の服とか副葬品のことも考えないといけない。なんならフラワーシャワーとクラッカーもやりたいし、結構考えることが多くて大変だ。そもそも私の葬式に人が集まるのか……?でもマツケンが来るなら行くわと言ってくれそうな友人には何人か心当たりがある。じゃあいいか。最悪誰も来てくれなくても、きっとマツケンは私の死を悼んでくれるに違いない。マツケンが葬式で踊ってくれるなら私も生きるのを頑張ってみようかな。